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北海道から東南アジアへ—世界を見据える環境のスペシャリスト【野外科学株式会社】

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札幌を拠点に、地質調査、測量、環境計量証明、建設コンサルタント等を手がける野外科学株式会社。

水質や土壌、騒音、振動など、目に見えない変化を数値として示す仕事を続けてきた会社だ。

代表取締役社長の高岡伸一さんは、3代目として会社を率いる。

しかしその経歴は、いわゆる経営畑ではない。長く現場に立ち続けてきた技術者だ。

その原動力にあるのは、学生時代から変わらぬ「公害を食い止めたい」という純粋な想いだった。

目に見えないリスクを「データで証明すること」が仕事

「地質調査や測量はもちろんですが、当社が特に力を入れているのが環境計量証明。例えば、水の中にカドミウムが何ミリグラム含まれているか、この工事の騒音は何デシベルか、といったデータを公に示すことができる資格と設備を持っています」

「最近ではアスベストの分析のほか、環境アセスメント(環境影響評価)の依頼も多いですね。家を建てる時の振動調査から、風力発電のような再生エネルギー事業まで、実は皆さんの生活のすぐそばにある問題を扱っています」

特筆すべきは、その分析設備の充実ぶりだ。

高度な分析機器を自社で整備し、調査から分析、結果の提示までを一貫して担う体制を築いてきた。

「当社の特徴は、同業の分析機関さんからの依頼も多いこと。それだけ設備投資には力を入れています。維持費もメンテナンス代も決して小さくはありませんが、自社で完結できるからこそ出せる精度とスピードがあると思っています」

公害をなくしたい。その気持ちで入社した

高岡さんは新卒で野外科学に入社した。

「当時は“公害”って言っていましたけど、今で言う“環境保全”ですね」

学生時代から「公害防止に貢献したい」という気持ちが強く、就職の武器として“公害防止管理者”の資格も取った。

「入社当時はまだ社員数も少なくて、岩盤試験からダムの測量まで何でもやりましたよ」

「僕は外が好きなんで」

その言葉通り、フィールドに立つことが原点だった。

ダイオキシン類分析装置(高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計:HR-GC/MS)
サンプルを装置に注入し、成分を分離して質量を測定することで、有機化合物の種類と濃度を分析する装置。

環境課題は、時代ごとに顔を変える

高岡さんの話を聞いていると、調査の仕事はそのまま社会の環境問題の歴史であることがわかる。

例えば、スパイクタイヤは、かつて当たり前だったタイヤのピンが道路を削り、粉じんが問題になった時代がある。

さらに、雪国特有の冬の道路に撒かれる塩は、安全のための散布が、植物や橋・道路などの構造物に負担をかけ、コンクリートや鉄筋の劣化を早めることもある。

そして、ダイオキシン、放射線……。

「世の中がざわついた時期って、必ず環境調査の仕事が動き出すんですよね」

環境の問題は、いつも見えにくい。
しかし見えないままにしておくわけにはいかない。

だから環境調査は、社会が気づく前から、あるいは社会が騒ぎ始めた直後から、静かに動き続ける。

その姿を、高岡さんはどこか淡々と語る。

けれど淡々としているからこそ、この仕事の日常性が際立って見えた。

同じことを繰り返さないために—日本の技術をベトナムへ

高岡さんの視線は、北海道の枠を飛び越えて東南アジアへと向けられている。

2019年から、ベトナム・ホーチミンにも法人を構えている。

「ベトナムは今、凄まじい勢いで発展しています。でもその裏で、かつての日本がそうだったように環境問題も深刻化しています。経済発展の最中は、環境はどうしても後回しになってしまうんですよね。だから、日本と同じことを繰り返してほしくない。当社の調査技術で、現地の人たちが自分たちの力で環境を守れるようにしたい」

ベトナム戦争の影響が残る地域では、環境調査の需要もある。

設備投資を抑えながら、現地でできることを模索している。

実際に、現地の大学と協定を結び、高度な分析をサポートするためのルートを構築するなど、その活動は本格的だ。

昨年10月には、ミャンマーから博士号を持つ優秀な女性研究者も仲間に加わった。

「彼女のような志のある人と一緒に、環境保全のネットワークを広げていきたい。それが、これまで環境に携わってきた私たちの一つの恩返しだと思っています」

活躍するのは「この仕事が好きな人」

ここで話題は、採用の話へと移る。

「活躍している人の共通点」について伺うと、答えはシンプルだった。

「この仕事が好きな人かな。何をやりたいか、しっかり確認して会社を選んでほしい。給料だけではなくて」

環境の仕事は、派手ではない。

それでも、社会の“当たり前”を支えている実感は、確かにある。

好きじゃないと続かない。

でも、好きでいられたら、ずっと深掘りできる仕事。

高岡さんの言葉を聞いていると、そう思えてくる。

編集後記

高岡さんと初めてお会いしたのは、北海道中小企業家同友会のゼロカーボン研究会だった。
もう4年ほど前になるだろうか。

研究会では、いつも活発に質問をされているのが印象的だ。
発表を聞いて終わりではなく、「実際にどうするのか」「次の課題は何か」と一歩踏み込む。
その姿勢は、今回の取材で語られた内容とも重なるものがあった。

他にも、江別や美唄、三笠などへの外部視察でもご一緒する機会があった。
移動の合間や見学の前後、いつも気さくに声をかけてくださる。
その自然体な佇まいが、強く印象に残っている。

取材の終盤、スマートフォンの中にある写真を見せてくれた。山で見つけた「きのこ」だという。

「やっぱり僕は外が好きなんです」

そう笑う姿は、社長というより、一人のフィールドワーカーそのもの。

環境を「仕事」として語る人でありながら、同時に自然を「身近なもの」として楽しむ人。
その両方を持ち合わせていることが、高岡さんらしさなのかもしれない。

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