「音読」って、することはありますか。
そう、声に出して本を読む「音読」です。
あれ、とてもよいですよ。
ビジネスパーソンにはお薦めです。
なぜなら、音読は「ディープリーディング」だからです。
ディープリーディングとは、本などを注意深く読むことです。
書き手の言葉を丁寧に読み、その主張や考え方を理解します。
と同時に、書き手の言葉や考えに疑問を持ち、批判的に考察します。
相手を理解しようとしながら、きちんと疑問も持つ。
とても高度なテクニックです。
じっくり読むので、記憶力の強化に繋がり、知識も増えます。
その知識を自分の経験や価値観と関連付けることもできます。
反対が「サーフェスリーディング」です。
ただ字面を追っているような、浅い、表面的な読みです。
その典型が、私たちがスマホを見ているときです。
すべての文章を読まない。
自分が気になるところだけ、簡単にわかるところだけをピックアップする。
読んでいない部分、わからないところは、自分の想像力で補う。
きっとこんな話だろうと、想像で組み立て、わかった気になります。
サーフェスリーディングでも、情報量は増えます。
ただ、自分と同質性の高い情報ばかりを手に入れがちになります。
いろんな肉を買おうと言いながら、「鶏胸肉」「鶏もも肉」「手羽元」「手羽先」「鶏皮」…、結局、すべて「鶏」といった感じです。
足りない情報を繋げるのが「自分の想像力」というのも危険です。
無意識的な自分の好みが、理解した内容に反映されるからです。
いろんな食材を手に入れても、「煮る」「揚げる」「蒸す」など、食材に合わせた調理をせず、すべて「塩コショーで焼く」という感じです。
サーフェスリーディングだと、四六時中いろんな情報に触れていても、自分に良い変化(=成長)はあまり起こりません。
違うことをやっているようでいながら、実際には同じようなことを繰り返しているからです。
どこを切っても、自分の顔の絵柄が出てくる「金太郎飴」みたいですね。
それは仏教で言うところの「輪廻」と似ています。
業に縛られ同じところをぐるぐる回っている。
(仏教でいう「悟り」は、「輪廻」から解き放たれる「解脱」のことです。)
そう考えると、「サーフェスリーディング」という輪廻状態から抜け出すきっかけが「音読」になります。(修行ですね。)
「音読」って、自分の思い通りにならないんです。
でも、そこが音読の良いところなんです。
(反時代的な考え方かもしれないですね。)
当然ですが、頭から順番に一つずつ声に出さなければならない。
面倒だからといって、すべてを同時に音として読むことはできない。
ハイスピードで音読をしても、内容は頭に入ってこない。
文章に合わせてスピードや読み方を調整しないといけません。
なんとなく意味がわかっている言葉の意味が気になってくる。
調べれば新たな知識を習得できる。
意味はわかっても読めない漢字は音読できない。
調べれば読めるようになる。
それまで自分が口にしたことがない言葉を音声にすることになる。
語彙や言い回しが増えます。
じっくりと読むことで、自分とは異なる感じ方、考えの組み立て方、価値観を知ることもできる。
それは、自分の中に他者を迎え入れることになる。
音読を続けていると、集中力や持続力も身につく。
集中力や持続力は何かを成し遂げるための土台ですね。
こんなふうに、音読にはいろんなメリットがあります。
サーフスェスリーディングは自分を変える必要がない。
自分が好きな言葉、自分にわかりやすい言葉を集め、自分に居心地の良い世界を作り上げる。
丁寧な音読は自分を変えることになる。
知らないこと、わからないことと関係を結んでいく。
それによって、他者の言葉、他者の考えと共存する世界を作り上げる。
自分の言葉や考えをしっかり持ちつつ、他者の言葉や考えとも協働する。
ビジネスパーソンにとって、「音読」はとても役立つ「修行」なんです。
私自身、ここ数年、「音読」を続けています。
きっかけはコロナに感染したことです。
コロナも厳しかったが、それ以上に後遺症がひどかった。
倦怠感、心的不安、ブレインフォグ、見事に三拍子揃っていました。
とくにブレインフォグはきつかった。
集中力が続かない。記憶力も落ちる。
論理的な思考ができない。人の話についていけない。
本を読んでも、気づけば字面を追っているだけ。
ふつうにできていたことができなくなっている。
ごまかしながら仕事をこなしていたが、不安になってくる。
このままでは社会的に生きていけないのではないか…。
どうしよう。
「自分はただのバカだ。多少できた時の自分は忘れよう。」
そう考えるようにした。
開き直りである。
集中力も、記憶力も、思考力も、理解力もない。
自分はただのボンクラなバカ者である。
そういう現実を受け入れることにした。
その上で考えた。
「バカな自分が、多少でも賢くなるにはどうすれば良いか。」
「鍛えよう。賢くなるトレーニングしよう。」
「では、具体的な方法は。」
「音読だ。」
「自分が理解できるスピードで、ゆっくりと本を音読しよう。」
書いてある内容から離れないように、意識を集中する。
言葉の一つ一つを脳に刻みこむように、きちんと声に出す。
主語、述語、目的語などの組み立てを意識しながら、ゆっくり読む。
数行前、数ページ前の内容と、目の前の文の内容の関係を確認するために、立ち止まり考える。
でも気がつけば、字面を追って、口がペラペラした声を出している。
あるいはいつの間にか、黙って本を眺め呆けている。
「おい、しっかりしろ」
自分を叱咤する。
ふたたび、ゆっくりと声を出し始める。
そんなことを数ヶ月続けた。
すると少しずつ、本が読めるようになってくる。
自分と、文字や文章が、ピタッとしてくる。
内容もしっかり理解できるし、読み終わっても覚えていられる。
人に説明する際にも、内容をきちんと再現できる。
語彙や言い回しも増えている。
気がつけば、コロナにかかる前よりも、本を読む力、集中力、記憶力、思考力などが向上していた。
その後、音読をする習慣は続いている。
字面だけ追い口から声が出ていたり、
いつの間にか黙ってぼーっとしていることもある。
そのたびに自分を叱咤、声を出して読み始める。
同じような日々を、数年、繰り返している。
それもまた自分の顔の絵柄が出てくる「金太郎飴」なのだろうか。
まあいい、他に手がないのだ。続けていこう。
そのうち、あたらしい絵柄が生まれてくるかもしれない。
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